【2026年最新】生命保険の死亡保険金にかかる相続税は?仕組みから税額計算まで相続専門税理士が解説
死亡保険金は、遺産分割の対象にならない受取人固有の財産です。ところが相続税の申告では「みなし相続財産」として課税の対象に含めます。そのかわり500万円 × 法定相続人の数までは非課税です。
この二段構えを知らないまま保険に入ると、せっかくの非課税枠を使いきれなかったり、死亡保険金の受取人の選び方ひとつで税額が2割増えたりします。実際、私たちのところへ寄せられるご相談でも、契約形態を見た瞬間に「これは相続税ではなく贈与税になります」とお伝えするケースがあります。
このページでは、保険金に税金がかかる理由から、非課税枠と基礎控除を組み合わせた無税ライン、金額別の税額まで、相続専門の税理士が順番に整理しました。読み終えるころには、ご自身の契約がどのパターンに当てはまるか判断できるはずの内容です。
この記事で分かること
- 死亡保険金が相続税の対象になる理由と、入院給付金との違い
- 契約者・被保険者・受取人の組み合わせで変わる3つの税金
- 非課税枠500万円×法定相続人の数の計算と按分のしかた
- 基礎控除と合わせて相続税がかからない金額の上限
- 保険金1,000万円・3,000万円・1億円の税額シミュレーション
目次
1. 死亡保険金が相続税の対象になる理由とみなし相続財産
1-1. 相続税法が定めるみなし相続財産という枠組み
亡くなった方が持っていた預貯金や自宅はそのまま相続財産です。死亡保険金は違います。契約の定めによって保険会社から受取人へ支払われるお金なので、法律の建前としては相続で引き継いだものではありません。
それでも相続税がかかります。理由は単純で、実質的に相続で財産をもらったのと同じ経済的な効果があるからです。ここを課税の対象から外すと、財産を全部保険に変えた人だけが税金を逃れられてしまいます。課税の公平を保つために、相続税法が特別に「相続で取得したものとみなす」と定めているわけですね。
こうした扱いを受ける財産を、まとめてみなし相続財産と呼びます。

なお、遺産分割協議の対象にはなりません。受取人が単独で請求できて、他の相続人の同意もいりません。税金の計算には入るのに、分け方の話し合いには入らない。この非対称が、ご家族の中で、誤解を生む最大の原因になります。
1-2. 相続税法が課税対象と定める財産の類型
みなし相続財産は保険金だけではありません。相続税法が挙げているのは、おおむね次のものです。
| 種類 | 中身 |
|---|---|
| 保険金 | 被相続人が保険料を負担していた死亡保険金 |
| 退職金 | 死亡退職金、功労金など |
| 保険権利 | 保険事故が起きていない生命保険契約に関する権利 |
| 定期金 | 個人年金保険などの定期金に関する権利 |
| 保証定期金 | 保証期間付定期金に関する権利 |
死亡退職金にも、保険金と同じく500万円×法定相続人の数の非課税枠があります。ただし枠は別枠です。保険金で使いきったから退職金の分がなくなる、ということはありません。両方受け取ったご家庭では、それぞれ独立して計算します。
1-3. 死亡保険金と入院給付金、同じ通知書で分かれる課税
ここからが実務の話です。
被相続人が入院していて、そのまま亡くなった。こういうとき、保険会社から届く1枚の支払通知書に、死亡保険金と入院給付金が並んで記載されていることがあります。同じ保険会社、同じ契約、同じ日の振込。それでも税務上の扱いは分かれます。
| 給付の種類 | 財産の区分 | 500万円の非課税枠 |
|---|---|---|
| 死亡保険金 | みなし相続財産 | 使える |
| 入院給付金 | 本来の相続財産 | 使えない |
入院給付金は、被相続人の病気やケガを保険事故とするお金です。亡くなったこと自体は支払いの原因ではありません。だからみなし相続財産にあたらないんです。受取人が被相続人本人になっている契約であれば、相続人はその請求権を引き継いだことになります。だから本来の相続財産として、預貯金と同じ扱いで相続税の課税価格に入ります。
そして入院給付金には500万円の非課税枠が使えません。ここを一括りにして申告すれば非課税枠を過大に適用したことになってしまいます。
関連記事:入院給付金に相続税はかかる?受取人別の課税判定と医療費控除の差引を相続専門税理士が解説

区分の判断材料は保険会社が発行する支払通知書です。内訳の欄に給付の名称が書かれています。金額をまとめて1行にせず、名称ごとに拾ってください。

相続専門税理士 藤本のチェックポイント
ご相談いただくなかで、保険会社からの振込額をそのまま「死亡保険金」として持ってこられる方がとても多いんです。通知書を拝見すると入院給付金が3割ほど混ざっていた、ということもありました。金額の大小ではなく区分が変わってしまうので、通知書は原本のままお持ちくださいね。
1-4. 保険事故が起きていない契約に生じる相続税
見落とされやすい財産が、もうひとつあります。
被相続人が保険料を払っていて、被保険者は配偶者や子。この状態で保険料を払っていた人が先に亡くなると、保険事故は起きていません。保険金も出ません。それでも「生命保険契約に関する権利」という財産が相続税の対象になります。
評価額は、亡くなった日に解約したと仮定した場合の解約返戻金の額。契約が長く続いていれば、数百万円になることもあります。
ちなみに、この権利には500万円の非課税枠は使えません。死亡保険金ではないからです。契約者の名義が誰かではなく、保険料を実際に負担していたのが誰かで判定する点も、死亡保険金と同じです。
生命保険をお持ちのご家庭では、被相続人が契約者になっている契約を一覧にしておくと、申告のときに漏れません。
2. 契約形態と財産規模から見る当てはまるケース
2-1. 保険証券で最初に確かめる欄の見方
作業は保険証券を1枚出すところから始まります。見るのは3つの欄です。
契約者、被保険者、死亡保険金受取人。あわせて保険料の引落口座も確かめてください。契約者の名義と引落口座の名義がずれている契約は珍しくなく、そのときは口座の名義人が税務上の保険料負担者になります。
この4点が分かれば、かかる税金が相続税なのか所得税なのか贈与税なのかが決まります。判定の中身は次のセクションで扱います。
2-2. 財産規模と家族構成で決まる対応の優先順位
次に見るのは財産の規模です。
保険金を含めた財産の合計が基礎控除額を下回るなら、相続税そのものは生じません。ただし判定に保険金を含める点は忘れないでください。非課税枠を超えた部分は課税価格に入るので、預金だけで基礎控除以下だったご家庭が、保険金を足したとたんに超えることがあります。
基礎控除を超えるご家庭では、次の2点が分岐になります。
| 状況 | 優先して見る論点 |
|---|---|
| 枠内 | 使い残した非課税枠がないか |
| 枠超え | 超過分にかかる税額の試算 |
| 配偶者 | 税額軽減と二次相続の負担 |
| 孫指定 | 非課税枠なしと2割加算 |
家族構成のほうは配偶者がいるかどうかで見る順番が変わり、配偶者がいれば税額軽減が効くぶん一次相続の負担は軽くなりますが、そのぶんの負担は配偶者自身の相続へ持ち越されることになります。受取人に相続人以外の方を指定している場合は、税額が2割増しになる論点が先に来ます。
2-3. ケース別に読むべきページの案内
ここまでで自分の位置が分かったら、該当するページへ進んでください。
| 知りたいこと | このページの該当章 |
|---|---|
| 税目 | 3. 契約形態で変わる3つの税金 |
| 枠 | 4. 非課税枠500万円の計算式 |
| 重なり | 5. 基礎控除との重なり方 |
| 税額 | 6. 財産構成別に見た税額 |
| 受取人 | 7. 受取人の決め方と2割加算 |
| 放棄 | 8. 相続放棄した場合の扱い |
| 対策 | 9. 相続対策としての使い方 |
該当する章の本文中から、その論点だけを深く扱った専用ページへ進めるようにしてあります。たとえば非課税枠の按分や、受取人を相続人以外にしたときの2割加算は、専用ページ側でさらに細かいケースまで解説しています。
このページから先は、どのケースにも共通する土台の部分を順に見ていきます。契約形態による税目の分かれ方、非課税枠の計算、基礎控除との重なり、財産構成別の税額。個別の事情に入る前に、ここを押さえておくと後の判断が速くなります。
3. 契約形態で変わる3つの税金と保険料負担者の判定
3-1. 判定の基準になる保険料の実質負担者
選べません。契約の形で自動的に決まります。
判定のカギは、契約者の名義ではなく保険料を実際に負担していたのが誰かという一点。名義は妻。実際に引き落とされていたのは夫の口座だった。この場合、税務上の負担者は夫、という扱いになります。
3つの税目それぞれの計算方法や、確定申告が必要になる金額の目安は死亡保険金にかかる税金の種類と金額別の目安で扱っています。
3-2. 相続税・所得税・贈与税を分ける契約の組合せ
被保険者が父、受取人が母や子というケースで、保険料の負担者だけを動かしてみます。
| 負担者 | 被保険者 | 受取人 | かかる税金 |
|---|---|---|---|
| 父 | 父 | 母 | 相続税 |
| 母 | 父 | 母 | 所得税 |
| 母 | 父 | 子 | 贈与税 |
負担者と受取人が同じ人なら所得税、負担者が亡くなった人なら相続税、負担者でも受取人でもない第三者が絡むと贈与税。おおまかにはこの並びで覚えられます。

3つのうち税負担が軽くなりやすいのは相続税のパターンです。非課税枠と基礎控除の両方が使えるからで、贈与税のパターンは基礎控除が年110万円しかなく、もっとも重くなりがち。同じ2,000万円の保険金でも、契約の形が違うだけで手元に残る額が数百万円変わります。それぞれの税額の出し方は、上の表のリンク先で扱っています。
3-3. 保険料を一部だけ負担していた場合の按分計算
負担者がきれいに1人とは限りません。途中で契約者を変更して、前半は父、後半は子が保険料を払っていた。こういう契約も珍しくないんです。
このときは負担した割合で保険金を分けて考えます。
関連記事:死亡保険金の税金は3種類・金額別シミュレーションと確定申告の要否を相続専門税理士が解説
相続税の対象になる保険金 = 保険金の額 × 被相続人が負担した保険料 ÷ 払込保険料の総額
保険金2,400万円、払込保険料の総額600万円のうち父が450万円を負担していたなら、2,400万円 × 450万円 ÷ 600万円 = 1,800万円が相続税の対象。残りは長男の一時所得になり、1つの保険金が2つの税金にまたがります。
厄介なのは計算ではなく、誰がいくら払ったかを何十年もあとから立証する作業のほうです。通帳の引き落とし履歴や贈与契約書が残っていないと、税務署への説明が苦しくなります。
4. 非課税枠500万円×法定相続人の数という計算式
4-1. 非課税限度額を求める計算式と適用の対象者
死亡保険金には、他の財産にはない非課税の枠があります。
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
相続人が2人なら1,000万円、3人なら1,500万円、4人なら2,000万円。1人増えるごとに500万円ずつ枠が広がります。
ただし、この枠を使えるのは、相続人だけ。相続人でない孫や内縁のパートナーが受け取った保険金には、一切適用されません。枠を超えた部分の扱いや受取人ごとの細かい計算は非課税枠500万円の計算方法にまとめました。
4-2. 相続放棄した人と養子がいる家庭での人数の数え方
計算式そのものはシンプルなのに、間違いが起きるのは「法定相続人の数」のところ。ふたつ、注意点があります。
相続放棄をした人がいても、放棄はなかったものとして、人数に数えます。放棄で枠が縮むことはありません。養子は、実子がいるご家庭で1人まで、いないご家庭で2人まで。孫を何人も養子にして枠を広げる手は使えません。
4-3. 複数人が受け取ったときの非課税枠の按分
受取人が2人以上いるとき、非課税枠は取り分に応じて分けます。均等割ではありません。
各人の非課税額 = 非課税限度額 × その人の保険金 ÷ 相続人全員が受け取った保険金の合計
計算事例
相続人が妻と長男・長女の3人、非課税限度額は1,500万円。妻が1,800万円、長男が1,200万円を受け取ったとします。妻の非課税額は 1,500万円 × 1,800万円 ÷ 3,000万円 で900万円、長男は600万円になります。
| 受取人 | 保険金 | 非課税額 | 課税分 |
|---|---|---|---|
| 妻 | 1,800万円 | 900万円 | 900万円 |
| 長男 | 1,200万円 | 600万円 | 600万円 |
| 合計 | 3,000万円 | 1,500万円 | 1,500万円 |

受け取った人が1人だけなら、枠を丸ごとその人に使えます。「受け取ったのは私1人だから枠も500万円ですよね」という誤解が本当に多いのですが、枠は受取人の人数ではなく法定相続人の数で決まります。
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関連記事:生命保険に相続税はかからない?非課税枠500万円を相続専門税理士が解説
5. 基礎控除と生命保険の非課税枠が重なる仕組み
5-1. 基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人の数
相続税には、保険とは別に全員が使える控除があります。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
財産の合計がこの金額以下なら、相続税は発生しません。相続人が3人なら4,800万円。基礎控除そのものの計算や早見表は相続税の基礎控除で詳しく解説しています。
法定相続人の数え方は、非課税枠のときと同じです。相続放棄をした人も含めて数え、養子は実子がいれば1人まで、いなければ2人まで。同じ数字を2つの控除で共有していると捉えると、計算の見通しが立ちます。

5-2. 二段構えで効く非課税枠と基礎控除の関係
保険金の非課税枠と基礎控除は、順番に効きます。
まず保険金から500万円×法定相続人の数を引く。残った額を他の財産と足す。その合計から基礎控除を引く。ここでマイナスになれば相続税は生じません。
課税価格 = 他の財産 +(保険金 − 非課税枠)
課税遺産総額 = 課税価格 − 基礎控除額
順番が大事なのは、非課税枠が保険金にしか効かないからです。基礎控除は財産全体から引けますが、非課税枠は保険金という特定の財産の中でしか使えません。使い残しても他の財産に振り替えることはできない。使わなかった枠は、そのまま消えます。
現金で3,000万円を残した場合と、同じ3,000万円を保険金として残した場合を比べてみます。相続人は3人とします。
| 残し方 | 課税価格に入る額 |
|---|---|
| 現金 | 3,000万円 |
| 保険金 | 1,500万円 |
差は1,500万円。財産の総額は変わっていないのに、課税価格だけが縮みます。相続対策で生命保険がよく話題になるのは、この一点があるからです。
ただ、保険は途中で解約すると元本を割ることがあります。税金の計算だけを見て加入を決めるものではありません。
5-3. 現預金と保険金で変わる課税価格の組み立て方
基礎控除と非課税枠を足すと、課税価格から差し引ける総額が出せます。
| 相続人 | 基礎控除 | 保険の枠 | 控除の合計 |
|---|---|---|---|
| 1人 | 3,600万円 | 500万円 | 4,100万円 |
| 2人 | 4,200万円 | 1,000万円 | 5,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 | 1,500万円 | 6,300万円 |
| 4人 | 5,400万円 | 2,000万円 | 7,400万円 |
| 5人 | 6,000万円 | 2,500万円 | 8,500万円 |

右端の数字は、保険金がちょうど枠に収まっているときの合計です。相続人3人のご家庭に6,300万円の財産があっても、そのうち保険金が500万円しかなければ、差し引けるのは5,300万円まで。残り1,000万円分の枠は使われないまま終わります。
同じ財産額でも、現預金と保険金のどちらに置いてあるかで課税価格が変わる。基礎控除だけを見ていると気づきにくいところです。
5-4. 二次相続まで見据えた控除枠の使い方
もうひとつ、一次相続の時点では見えにくい論点があります。
配偶者と子2人のご家庭で夫が亡くなると、法定相続人は3人。基礎控除4,800万円、非課税枠1,500万円が使えます。その後、配偶者が亡くなる二次相続では相続人が子2人に減ります。
| 相続 | 基礎控除 | 保険の枠 |
|---|---|---|
| 一次 | 4,800万円 | 1,500万円 |
| 二次 | 4,200万円 | 1,000万円 |
基礎控除が600万円、非課税枠が500万円。合わせて1,100万円分の枠が二次相続では消えます。配偶者の税額軽減も使えません。一次相続で配偶者に寄せすぎると、二次相続で重い税額が返ってくるのはこのためです。
保険で対応するなら受取人を分けて2本立てにする方法があり、配偶者を受取人にする契約が一次相続の枠を、子を受取人にする契約が配偶者自身の相続に備えた資金を、それぞれ担うという組み立て方になります。受取人は契約者の申し出で変更できるので、ご家族の状況が変わったときに組み替えられるのも保険の使いやすいところですね。
比較事例
相続人は妻と子2人。財産は7,000万円で、全額が現預金というご家庭を考えます。
- そのまま現預金で相続した場合:課税価格7,000万円 − 基礎控除4,800万円 = 課税遺産総額2,200万円。相続税の総額は225万円で、配偶者の税額軽減を適用した納付額は112万5,000円
- うち1,500万円を一時払い終身保険に振り替えた場合:保険金1,500万円は非課税枠に収まるため課税価格は5,500万円。課税遺産総額700万円、相続税の総額70万円、納付額は35万円
差は77万5,000円。財産の総額は変えていません。置き場所を現預金から保険金に移しただけです。なお、ここでは払込保険料と死亡保険金額を同額として単純化しています。実際の商品では保険金額のほうが大きくなることが多く、効果はさらに広がります。
5-5. 無税でも相続税の申告が必要になるケース
税金がゼロでも、相続税の申告書を出さなければならないことがあります。
小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使ってゼロになった場合は、申告が条件です。これはよく知られています。あまり知られていないのが、保険金だけを受け取った人の話です。
非課税枠の範囲内の死亡保険金だけを受け取った。他には何ももらっていない。この人に相続税は生じません。ところが税法上は「相続又は遺贈により財産を取得した者」に該当します。
該当するとどうなるか。生前贈与加算の対象になります。亡くなる前の一定期間内に被相続人から贈与を受けていれば、その贈与財産を相続財産に足し戻して計算しなければなりません。加算対象の期間は、令和6年1月1日以後の贈与から段階的に延びていて、最終的には相続開始前7年以内になります。
保険金は非課税枠に収まっているのに、過去の贈与が足し戻された結果、申告と納税が必要になる。こういう順序で発生します。

相続専門税理士 藤本のチェックポイント
以前、お母さまから毎年110万円ずつ贈与を受けていた娘さんが、保険金300万円だけを受け取ったケースがありました。ご本人は「非課税枠内だから何もしなくていい」と思っておられて、期限のあとにご相談に来られたんです。贈与の履歴がある方は、保険金の金額だけで判断なさらないでくださいね。
6. 財産構成別に見た保険金と相続税額の関係
6-1. 計算に使う共通の前提条件と手順
保険金の額が同じでも、他の財産が現預金なのか不動産なのかで、保険の役割はまるで変わります。ここから3つの家庭像で見ていきます。
計算の順序は、保険金から非課税枠を引く、他の財産と足す、基礎控除を引く、法定相続分で割って税率をかける、最後に各人へ按分し配偶者の税額軽減を適用する。この流れです。
| 家庭像 | 財産の中心 | 保険に期待する役割 |
|---|---|---|
| A | 現預金 | 課税価格の圧縮 |
| B | 不動産 | 納税資金の確保 |
| C | 高額資産 | 負担の平準化 |
6-2. 現預金中心のご家庭で保険が効く場面
財産の大半が預金や有価証券というご家庭では、非課税枠がそのまま効きます。
計算事例
相続人は妻と長男の2人。夫が遺した財産は6,200万円で、内訳は預金4,700万円と上場株式1,500万円。不動産は賃貸住まいのため持っていません。
このまま相続すると、課税価格6,200万円から基礎控除4,200万円を引いて課税遺産総額は2,000万円。相続税の総額は200万円で、配偶者の税額軽減を適用すると長男が100万円を納めます。
生前に預金のうち1,000万円を一時払い終身保険へ移していた場合はこうなります。
| 項目 | 現預金のまま | 保険へ1,000万円 |
|---|---|---|
| 課税価格 | 6,200万円 | 5,200万円 |
| 課税遺産総額 | 2,000万円 | 1,000万円 |
| 相続税総額 | 200万円 | 100万円 |
| 納付税額 | 100万円 | 50万円 |
非課税枠1,000万円をちょうど使いきった形です。納付額は半分になりました。
現預金は評価額を圧縮する手立てがほとんどありません。不動産のような小規模宅地等の特例も、路線価と時価の差もない。額面がそのまま課税価格になります。だからこそ、非課税枠という数少ない圧縮手段の価値が相対的に大きくなります。
枠の残りを確認して、その分だけ一時払いの保険に振り替える。現預金中心のご家庭では、これが最初に検討される選択肢になりやすいところです。
6-3. 不動産中心で納税資金が不足するケース
問題が起きやすいのは、こちらです。
計算事例
相続人は子2人。母はすでに他界していて、父の財産は自宅と賃貸アパートで1億5,000万円、現預金が1,300万円というご家庭です。
保険に入っていない場合、課税価格は1億6,300万円。基礎控除4,200万円を引いた課税遺産総額は1億2,100万円で、相続税の総額は2,230万円になります。配偶者はいないので税額軽減も使えません。現預金1,300万円に対して納税が2,230万円。900万円以上足りない計算です。
生前に現預金のうち1,000万円を一時払い終身保険に振り替えていたら、どうなるか。
| 項目 | 保険なし | 保険あり |
|---|---|---|
| 課税価格 | 1億6,300万円 | 1億5,300万円 |
| 課税遺産総額 | 1億2,100万円 | 1億1,100万円 |
| 相続税総額 | 2,230万円 | 1,930万円 |
税額が300万円下がります。ただ、このケースで効いているのはむしろ別の点です。保険金1,000万円は遺産分割協議を待たずに受取人へ直接支払われます。不動産は分けにくく、話し合いが長引きがちです。協議が終わらないうちに10か月の納付期限が来ても、保険金だけは動かせます。
不動産を売って相続税の納税資金を作ろうとすると、買い手を探す時間と、譲渡所得税という別の負担がのしかかります。物納や延納にも要件があり、誰でも使えるわけではありません。

6-4. 保険金が非課税枠を大きく超えたときの負担
金額が大きくなると、非課税枠の存在感は相対的に小さくなります。
妻と子2人が相続人で、他の財産が5,400万円、保険金が1億円というケース。非課税枠1,500万円を引いた8,500万円が課税価格に加わり、合計1億3,900万円。基礎控除4,800万円を差し引いた課税遺産総額は9,100万円です。
妻の法定相続分4,550万円に税率20%(控除200万円)で710万円、子は2,275万円ずつに15%(控除50万円)で291万2,500円ずつ。相続税の総額は1,292万5,000円。配偶者の税額軽減を適用した納付額は、子2人で約646万円になります。
| 保険金 | 課税分 | 納付税額 |
|---|---|---|
| 1,500万円 | 0円 | 35万円 |
| 3,000万円 | 1,500万円 | 約106万円 |
| 1億円 | 8,500万円 | 約646万円 |
1億円のケースでは、非課税枠が減らしてくれた税額は全体の1割ほど。この帯域では、保険は節税の道具というより、納税と分割を同時に片づける道具として設計するほうが実態に合います。
財産構成に合った備え方を知りたい方へ
相続専門の税理士に
ご相談ください
受付時間 平日 10:00〜17:00
参考:相続税の計算(国税庁)
参考:相続税の税率(国税庁)
関連記事:死亡保険金の税金は3種類・金額別シミュレーションと確定申告の要否を相続専門税理士が解説
7. 受取人の決め方で変わる受取割合と2割加算の適用
7-1. 指定した受取人が先に亡くなっていた場合の均等割
死亡保険金の受取人の指定のしかたで、誰がいくら受け取るかが変わります。
| 指定 | 受け取る人 | 割合 |
|---|---|---|
| 存命 | 指定されたその人 | 全額 |
| 先死亡 | 指定された人の法定相続人 | 均等 |
| 相続人 | 保険事故時点の相続人 | 相続分 |
| なし | 約款の定める順位の人 | 約款による |
注意したいのが2行目です。受取人に指定していた人が先に亡くなり、変更しないまま相続が起きると、保険金は先に亡くなった受取人の法定相続人が均等に受け取ります。相続分ではありません。長男に妻と子2人がいれば、3人が3分の1ずつです。
7-2. 「相続人」と指定したときに適用される相続分
一方、受取人の欄に個人名ではなく「相続人」と書いてある契約もあります。この場合は法定相続分の割合で分けます。妻と子2人なら、妻2分の1・子4分の1ずつ。
同じ「複数人で分ける」でも、先死亡なら均等、相続人指定なら相続分。この分岐が実務でいちばん混乱を招くところです。保険証券の受取人欄がどちらの書き方になっているか、一度確認してみてください。

受取人を変更したいときは、保険契約者が保険会社に申し出れば手続きできます。他の相続人の同意はいりません。誰を受取人にすべきかという判断軸そのものは受取人を誰にすべきかの判断軸で整理しています。
7-3. 相続人以外を受取人にしたときに重なる不利
孫やお世話になった方を受取人にしたい。そういうご希望はよく伺います。気持ちは分かるのですが、税金の面ではかなり不利になります。
不利が3方向から重なるからです。まず非課税枠が使えません。次に相続税額が2割増しになります。さらに、その人が受け取ったぶん課税価格の合計が増えるので、他の相続人の税額まで上がってしまう。
失敗事例
川西さん(仮名)は、かわいがっていたお孫さんを死亡保険金1,000万円の受取人にしていました。相続人は長男と長女の2人。保険金以外の財産は6,000万円。
- 孫は相続人ではないため、非課税枠1,000万円は使えず、保険金は全額が課税価格に加算
- 課税価格7,000万円 − 基礎控除4,200万円 = 課税遺産総額2,800万円
- 相続税の総額320万円。孫の負担分は2割加算後で約55万円
- 長男・長女は約137万円ずつ。3人合計で約329万円
もし受取人を長男にしていれば、非課税枠1,000万円が使えて、課税価格は6,000万円。納税額は2人あわせて180万円で済みました。受取人を孫にしただけで、家族全体の負担が約149万円増えた計算です。
どうすれば防げたか。保険金は孫へ渡したいという希望を、遺言による遺贈や生前贈与など別の手段に振り分ける方法があります。加入時に税理士へ一度確認していれば、選択肢を比べられたケースでした。

相続専門税理士 藤本のチェックポイント
受取人の欄、最後に見たのはいつでしょうか。離婚や再婚のあと、前の配偶者のお名前が残っている契約を何度も拝見しています。年に一度、保険証券を出して確認する日を決めておくと安心ですよ。
関連記事:死亡保険金の受取人は誰にすべき?3つの選び方を相続専門税理士が解説
8. 相続放棄した人が受け取る保険金の課税上の扱い
8-1. 非課税枠が使えない一方で人数には算入される理由
相続放棄をしても、死亡保険金は受け取れます。受取人固有の財産なので、相続財産ではないからです。借金を引き継ぎたくなくて放棄したご家庭でも、保険金だけは手元に残ります。
ただし税金の扱いは変わります。放棄した人は相続人ではなくなるため、500万円×法定相続人の数という非課税枠が使えません。受け取った保険金は全額が課税対象です。
一方で、非課税枠を計算するときの「法定相続人の数」には、放棄した人も含めて数えます。放棄しても枠の大きさは縮まない。けれど放棄した本人は枠を使えない。この2つが同時に成り立っています。
放棄した人が受け取る保険金は、相続ではなく遺贈で取得したものとして扱われます。放棄の手続きや期限との関係は相続放棄したときの保険金の扱いで解説しています。
8-2. 配偶者の税額軽減と2割加算、放棄後も残る救済
放棄すると何もかも不利になるかというと、そうでもありません。残る救済が2つあります。
ひとつは配偶者の税額軽減です。配偶者が相続放棄をして保険金だけを受け取った場合でも、この軽減は適用されます。1億6,000万円と法定相続分相当額のいずれか多い金額まで、配偶者に相続税はかかりません。非課税枠を失ったぶんを、こちらがかなり吸収してくれます。
もうひとつは2割加算の扱いです。子が相続放棄をしても、被相続人の一親等の血族であることに変わりはありません。放棄した子には2割加算が適用されません。孫や兄弟姉妹が受け取る場合との差は、そこにあります。
放棄を検討されるご家庭では、この2点を織り込んで試算してみてください。数字を出してみると、思っていたほど不利ではなかった、という結論になることがけっこうあります。
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関連記事:相続放棄と生命保険 500万円の非課税枠が使えない注意点を税理士が解説
9. 相続対策として生命保険が選ばれる実務上の理由
9-1. 預金は三角、生命保険は四角という保障の形
毎月コツコツ預金を積み立てると、残高は右肩上がりに増えていきます。グラフにすると三角形。積立を始めた翌年に相続が起きれば、貯まっているのはわずかな額だけ。
生命保険は違います。契約した時点から、保険金額の全額が保障されます。1年目に相続が起きても、20年目に起きても、支払われる金額は同じ。グラフにすると四角形になります。

必要な金額がいつ必要になるか分からない。相続はそういう性質の出来事。時期を選べない納税資金の備えには、生命保険の四角い形のほうが噛み合います。保険を相続対策に使う理由とデメリットの全体像は生命保険を使った相続税対策の全体像にまとめました。
9-2. 受取人が単独で請求でき5営業日で振り込まれる速さ
もうひとつ、実務でありがたいのが現金化の速さです。
被相続人の預金口座は、金融機関が死亡を把握した時点で凍結されます。解除するには遺産分割協議書や相続人全員の同意書が必要で、話し合いがまとまらなければ長期間動かせません。
死亡保険金にその制約はありません。受取人が単独で請求でき、書類がそろえば原則5営業日以内に振り込まれます。他の相続人の同意も、遺産分割協議の成立も条件になりません。
相続税の納付期限は亡くなったことを知った日の翌日から10か月。この期限に間に合わせるうえで、分割協議と切り離して動かせるお金があるかどうかは大きな差になります。

相続専門税理士 藤本のチェックポイント
遺産分割でお子さん同士が対立してしまい、納付期限まで残り2か月というご相談がありました。保険金があったので納税だけは間に合ったんです。分割の話し合いと納税の準備は、切り分けて考えてくださいね。
9-3. 既に加入している契約の見直しに使える手段
新しく入るだけが選択肢ではありません。すでにある契約を組み替えて、保険料の負担や保障額を調整する方法もあります。
| 手段 | 内容 |
|---|---|
| 解約 | 契約を終了して解約返戻金を受け取る |
| 減額 | 保険金額を下げて保険料の負担を軽くする |
| 払済 | 以後の保険料を止め、保障額を下げて続ける |
| 延長 | 以後の保険料を止め、保障額のまま期間を短くする |
整理するなら、予定利率の高い古い契約は残すほうが有利です。バブル期前後に契約した終身保険には、予定利率が5%を超えるものもあります。解約する順番を間違えると取り返しがつきません。
生命保険を活用した相続対策
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関連記事:生命保険で相続税対策 4つの理由とデメリットを相続専門税理士が解説
10. 一時払い終身保険と払込方法ごとの向き不向き
10-1. 一時払いと有期払込み、終身払込みの選択肢
終身保険の保険料の払い方は、大きく3通り。
契約時に全額を一度で払うのが一時払い。10年や65歳までなど期間を区切って払うのが有期払込み。亡くなるまで払い続けるのが終身払込みです。
相続対策で使われることが多いのは一時払いです。まとまった現預金を保険金に置き換えられるので、非課税枠を使いきる目的に合います。健康状態の告知が緩やかな商品もあり、高齢の方でも加入できる場合があります。商品ごとの条件や注意点は一時払い終身保険の仕組みとデメリットで扱っています。
10-2. 終身払込みが納税資金の確保に向かない理由
避けたいのが終身払込みです。
1回あたりの保険料が安いので、加入時の負担感は軽くなります。ところが払込みが終わりません。長生きするほど累計の負担が増え続け、どこかで保険金額を上回ることもあります。
途中で解約すれば負担は止まりますが、それでは納税資金を確保するという当初の目的が消えてしまいます。相続対策として入るなら、払込期間に終わりのある形を選ぶほうが計算が立ちます。
保障が高齢期に縮んでいく定期付終身保険も、同じ理由で相続対策には向きません。
関連記事:一時払い終身保険で相続税が0円に?非課税枠を相続専門税理士が解説
11. 所得税の生命保険料控除と相続税の非課税枠の違い
11-1. 生命保険料控除が働くのは所得税と住民税の場面
年末調整や確定申告で使う生命保険料控除は、所得税と住民税の制度です。その年に支払った保険料に応じて、所得から一定額を差し引けます。
一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の3区分があり、所得税では合計で最大12万円が控除の上限。契約時期によって旧制度と新制度に分かれ、計算方法も変わります。
対象になるのは「その年に払った保険料」のほう。受け取った保険金ではありません。
参考:生命保険料控除(国税庁)
11-2. 相続税に生命保険料控除は存在しないという結論
一方、相続税の計算に生命保険料控除という項目はありません。相続税で保険に関係する規定は、500万円×法定相続人の数の非課税枠のほうです。
| 制度 | 税目 | 対象 |
|---|---|---|
| 保険料控除 | 所得税・住民税 | 毎年払った保険料 |
| 非課税枠 | 相続税 | 受け取った死亡保険金 |
「相続税 生命保険控除」という言葉で検索される方が一定数いらっしゃいますが、探しておられるのはおそらく非課税枠のことです。名前が似ているうえ、どちらも生命保険に関する減税の仕組みなので、混ざってしまうのも無理はありません。
ちなみに、生前に子へ保険料相当額を贈与して、子が契約者として保険に入る方法があります。このとき子の確定申告で生命保険料控除を申告していた記録は、保険料を実際に負担していたのが子である証拠のひとつになります。所得税の制度が、相続税の判定を裏づける材料として働く場面ですね。
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まとめ
このページで見てきた内容を並べておきます。
- 死亡保険金は受取人固有の財産だが、相続税法ではみなし相続財産として課税対象になる
- 保険料を実際に負担していたのが誰かで、相続税・所得税・贈与税に分かれる
- 非課税枠は500万円×法定相続人の数。放棄した人も人数には入るが、本人は枠を使えない
- 基礎控除と合わせると、相続人3人のご家庭で6,300万円までが無税ラインの目安
- 受取人を相続人以外にすると、非課税枠なし・2割加算・生前贈与加算が重なる
- 保険金は受取人が単独で請求でき、原則5営業日以内に振り込まれる
まず手元の保険証券を出して、契約者・被保険者・受取人の3つを確かめるところから始めてみてください。ここが想定と違っていた、というご相談は本当に多いんです。
よくある質問
相続税の対象になるパターン(保険料を負担していた被相続人が亡くなった場合)では、所得税の確定申告はいりません。保険料を自分で負担していて自分で受け取った場合は一時所得となり、確定申告が必要になることがあります。
500万円×法定相続人の数までです。相続人が3人なら1,500万円。この枠を使えるのは相続人が受け取った保険金に限られ、相続人以外の方が受け取った分には適用されません。
遺産分割の対象となる相続財産には含まれません。受取人固有の財産だからです。ただし相続税を計算するときは、みなし相続財産として課税価格に加えます。
保険金が非課税枠を超え、なおかつ他の財産と合わせた課税価格が基礎控除額を超えたときです。相続人3人なら、非課税枠1,500万円と基礎控除4,800万円を合わせた6,300万円が目安になります。
保険料を親が負担し、被保険者も親で、子が受取人という形なら相続税の対象です。契約者の名義ではなく、保険料を実際に負担していたのが誰かで判定します。
ありません。生命保険料控除は所得税と住民税の制度です。相続税で保険に関係するのは、500万円×法定相続人の数の非課税枠のほうになります。