相続時口座照会制度とは?分かること・手数料・申込の流れを相続専門税理士が解説
父親の部屋を片づけていたら、見覚えのない銀行のキャッシュカードが1枚出てきた。通帳はない。取引があったのかどうかも分からない。相続税の申告をお手伝いしていると、こういうご相談が毎年いくつも入ってきます。
亡くなった方がどこの金融機関と付き合っていたのか。残された家族が正確に把握しているケースは、むしろ少数派です。
それでも相続税の申告では、被相続人名義の預貯金を1円単位で拾い上げて財産目録に載せなければなりません。この財産調査を助ける仕組みが、2025年4月1日に始まりました。相続時口座照会制度です。全国の金融機関に対して、被相続人名義の口座があるかどうかをまとめて聞くことができます。
ただ、期待しすぎると足をすくわれます。この照会だけでは相続税の申告書は1行も埋まりません。何が分かって何が分からないのか、そして分からなかった部分をどう埋めるのかまで、相続専門の税理士の立場から書いていきます。
この記事で分かること
- 相続時口座照会制度で分かる情報と、残高が含まれない理由
- 申込から結果通知までの期間と手数料の目安
- 2026年10月1日の規定改正で新設される手数料返還のルール
- 照会結果だけでは相続税申告ができない理由と、追加で必要になる書類
- 申告期限10か月・相続放棄3か月から逆算した申込タイミング
目次
1. 相続時口座照会制度とは?2025年4月開始の一括照会
1-1. 口座管理法にもとづく制度と預金保険機構の役割
根拠になっているのは口座管理法(令和3年法律第39号)です。正式名称は「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律」で、2025年4月1日から預貯金口座付番制度等の拡充として動き始めました。
仕組みは二層になっています。申込を受け付けるのは預金保険機構から業務を委託された金融機関で、実際に全国の金融機関へ照会をかけるのが預金保険機構。窓口と実行部隊が別なんですね。
ありがたいのは、被相続人が取引していなかった金融機関の窓口でも申し込めるという点です。手元にキャッシュカードが1枚もなくても、最寄りの委託先金融機関に行けば手続きが始められます。
1-2. 照会で分かる5項目と、分からない残高
照会結果として通知されるのは、次の5項目です。
| 項目 | 分かる/分からない |
|---|---|
| 金融機関名 | 分かる |
| 支店名 | 分かる |
| 種類 | 分かる |
| 口座番号 | 分かる |
| 預貯金者名 | 分かる |
| 残高 | 分からない |
| 取引明細 | 分からない |
| 証券口座 | 分からない |

利用規定には「当該預貯金口座の残高は対象外です」とはっきり書かれています。どこに口座があるかは分かる。いくら入っているかは分からない。この線引きが、後半で効いてきます。
1-3. 対象となる「付番済み口座」
照会の対象になるのは確認対象先の金融機関へ照会をかけた時点で付番が完了している口座だけで、この付番というのは生前に本人が金融機関の窓口かマイナポータルからマイナンバーを届け出て、自分名義の口座と紐づけておく手続きを指します。
届出は任意です。義務ではありません。ですから口座が実在していても、付番されていなければ照会結果には一切現れません。制度の名前だけ聞くと国が全口座を把握しているように感じますが、そういうものではないんです。
2. 申込に必要な書類と手数料、結果が届くまでの期間
2-1. 申込できる相続人の範囲と必要書類
申し込めるのは、国内に通知先を持つ相続人(包括受遺者を含みます)と、その代理人です。ここで見落とされやすいのが申込の単位で、被相続人ごとに1件、そして相続人の連名では受け付けてもらえません。父と母が相次いで亡くなったようなケースでは、2件それぞれ申し込むことになります。
必要書類は金融機関ごとに案内が少しずつ違いますが、中心になるのは戸籍関係の書類です。相続に必要な戸籍謄本を出生から死亡まで揃えるか、法定相続情報一覧図を先に取っておくか。どちらを選ぶかで、この先の手続き全体の手間がかなり変わってきます。
2-2. 被相続人の死後10年という期限
照会できるのは被相続人の死後10年までです。相続税の申告期限が10か月ですから通常の相続手続きの中で期限切れになることはまずありません。気をつけたいのは、何十年も前に亡くなった祖父母の代の口座を今から探そうとする場合。この制度では手が届きません。
2-3. 手数料の目安
1件あたり5,060円(税込)。申込を受け付けている金融機関を確認した限り、窓口がどこでも同じ金額です。支払うタイミングは申込のときで、受付窓口となる金融機関に払います。
注意点をひとつ。照会の結果が「該当口座なし」であっても、手数料は返ってきません。空振りのリスクを織り込んだうえで申し込むかどうかを決める、という性質の手続きです。
2-4. 申込から結果通知までの流れ
申込を受けた金融機関が預金保険機構に取り次ぎ、機構が全国の金融機関へ照会をかけて戻ってきた回答をまとめたものが通知書になります。この通知書は申込時に届け出た国内の住所あてに転送不要の簡易書留で郵送されますので、施設に入っている方や長く家を空けている方が申込人になる場合は誰がどこで受け取るのかまで決めておくほうが確実です。
申込から手元に届くまで、おおむね1か月。窓口で書類を出したその場で結果が見られる、といったスピード感の手続きではありません。


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ご相談いただくなかで多いのが、必要書類をひととおり揃えたつもりで窓口に行き、戸籍が1通足りずに出直しになるケースです。特にご両親が何度か本籍を移されている場合、思っているより通数が増えます。先に法定相続情報一覧図を取っておくと、この後の残高証明書の請求でも同じものが使えるので、二度手間が減りますよ。
関連記事:法定相続情報一覧図とは?取得方法・必要書類・書き方を相続専門税理士が解説
3. 申込前に押さえる3つの注意点
3-1. 申込をきっかけとした口座凍結
照会をかけると確認対象になった金融機関に被相続人が亡くなった事実が伝わります。金融機関によってはその時点で口座の取引停止措置が取られます。
葬儀費用の支払いを故人の口座から出すつもりだった、公共料金の引き落としがまだ残っている。そういう状況だと、照会の申込が引き金になって家族が立ち往生します。
預貯金の仮払い制度を使う予定があるなら、その手続きと照会申込のどちらを先にするかは、順番を決めてから動いたほうが安全です。
3-2. 対象外の金融機関とデジタル庁の指定
すべての金融機関が照会先になるわけではありません。デジタル庁が指定する特定の金融機関は、この制度の対象外とされています。該当する金融機関はデジタル庁のウェブサイトで公表されているので、心当たりの銀行があるなら先に確認しておくと空振りを避けられます。
もうひとつ、窓口の話と混同しないでください。申込を受け付けられるのは預金保険機構の委託先金融機関だけです。ただし照会そのものは全国の金融機関へ向けて行われます。申し込む場所が限られるという話であって、照会の届く範囲が委託先だけに絞られるわけではありません。
3-3. 「該当なし」で返ってくるケースと休眠口座
ここは制度の説明があまり親切でない部分です。通知書に書かれた「該当口座なし」には、次の3つが混ざっています。
本当に口座が存在しない場合。口座は存在するけれど付番が完了していない場合。そして、照会を行った期間内に金融機関から回答がなかった場合。この3つが同じ「該当口座なし」という表示になります。
長く動かしていない休眠口座もこれとまったく同じ理屈で付番されていなければ出てきません。「該当なし」は「口座がない」ことの証明にはならないと考えておいてください。そのうえで手数料は戻ってきません。

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以前、お父さまが亡くなってすぐに口座照会を申し込まれた方から、慌てたお電話をいただいたことがあります。数日後に葬儀社への支払いをしようとしたら、当てにしていた口座が止まっていた、と。ご家族で立て替えてしのがれましたが、あのときは私も一緒に青くなりました。
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4. 2026年10月1日に新設される手数料の返還ルール
現行の利用規定では手数料は原則として返ってきません。書類に不備があった場合でも該当口座なしという結果でも返還されない建て付けになっています。
ここに例外がひとつ加わります。預金保険機構が公表している改正予定版の利用規定で、2026年10月1日から次の取扱いが新設される予定です。
- 機構が被相続人の個人番号を確認できず、口座管理法8条5項にもとづく通知ができない場合、機構はあらためて個人番号の確認を行うことができる
- 依頼者がそれを希望しない場合は、その時点で依頼が合意解除されたものとして扱う
- 合意解除された場合は、委託先金融機関を通じて手数料等が返却される
- ただし振込で返金するときは、振込手数料を依頼者が負担することがある

個人番号を確認できない事態は実際に起きています。戸籍の附票の除票に書かれた住所表記と住民基本台帳の表記が食い違っていたり似た住所に同姓同名で同じ生年月日の方が住んでいたりすると機構の側でマイナンバーを特定できず、照会そのものが空振りに終わることがあるんです。
現行制度だと、この空振りでも5,060円は戻りません。改正後は、依頼者が再確認を望まなければ返金の道が開かれます。2026年10月1日より前に申し込むか、後にするかで、空振り時の負担が変わるということですね。
なお、これはあくまで改正予定版として公表されている内容です。施行までに変更される可能性はあります。
参考:相続時預貯金口座照会利用規定【令和8年10月1日改正予定版】(預金保険機構)
5. 照会結果に加えて必要な残高証明書と過去の取引明細

通知書に書いてあるのは口座の所在だけです。相続税の申告で必要になるのは金額。ここに落差があります。
5-1. 残高証明書と既経過利息計算書の取得
申告で使うのは、相続開始日現在の残高です。あわせて既経過利子も財産に含めます。その日に解約したとしたら受け取れる利息から、源泉徴収されるべき税額に相当する額を差し引いた金額のことで、定期預金があるとまとまった額になることがあります。普通預金のように既経過利子が少額なものは、預入残高だけで評価してかまいません。
ですから照会結果で口座が判明したところがようやく出発点で、そこから各金融機関に残高証明書と既経過利息計算書を一件ずつ請求していく作業が始まりますし、金融機関の数だけ書類を揃えて窓口に行くか郵送でやり取りするかを繰り返すことになります。
もうひとつ、過去の取引明細も取ってください。目安は3年から5年分、可能なら10年分。生前贈与の履歴、使途のはっきりしない出金、相続人名義の口座への振替。過去10年の大きな財産の増減は、相続財産の漏れや贈与税の論点に直結します。税務調査で最初に見られるのもこのあたりです。
ちなみに残高証明書の請求も、口座凍結の引き金になります。注意点のところで書いた話と同じ構造で、これは制度が始まる前からある論点でした。
5-2. 照会に出てこない名義預金
照会結果には被相続人名義の口座しか載りません。ところが相続税の実務で一番もめるのは、名義預金です。
名義預金というのは配偶者や子や孫の名義になっているけれど実質は被相続人の財産だったと判断される預金のことで、判定は次の3点を総合して行われます。
- その預金の資金がどこから出たのか
- 管理と運用を行っていたのは誰か
- 名義人に贈与を受けたという認識があったか
奥さまの名義で毎年こつこつ積み立てていた、お孫さんの名義で通帳を作って渡していない。こういう預金は照会にはかかりません。かからないのに、税務調査では真っ先に見られます。
5-3. 「ほふり」への開示請求が必要な証券口座
相続時口座照会制度はあくまで預貯金についての制度なので証券口座はまったく入っていません。
株式や投資信託がどこの証券会社にあるか分からない場合は、証券保管振替機構、通称ほふりへ「登録済加入者情報の開示請求」を行います。まったく別ルートの手続きです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手続名 | 登録済加入者情報の開示請求 |
| 期間 | 受付から約1か月 |
| 分かる | 口座がある証券会社・信託銀行等の一覧 |
| 不明分 | 銘柄名、取引履歴、保有残高 |
費用は、請求する人の立場と法定相続情報一覧図を使うかどうかで変わります。2026年10月1日に改定される点にも気をつけてください。
- 法定相続人が請求する場合の金額(ご本人が自分の口座を調べる場合、遺言執行者が請求する場合は別区分)
- 改定後の金額は、開示請求書を出した郵便の消印日が2026年10月1日以降のときに適用
- 同一の方について2件目以降の調査対象住所がある場合、1件あたり1,100円の追加費用(改定なし)
| 区分 | 2026年9月30日まで | 2026年10月1日から |
|---|---|---|
| 一覧図あり | 4,950円 | 6,050円 |
| 一覧図なし | 6,050円 | 7,700円 |
法務局が発行した法定相続情報一覧図のコピーを添えると、2026年9月30日までなら1,100円、10月1日以降は1,650円下がります。ここでも一覧図が効いてくるんですね。
そして開示されるのは「どこに口座があるか」まで。銘柄も残高も出ないので、判明した証券会社へあらためて残高証明書を請求します。預貯金とまったく同じ二段構えです。

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関連記事:名義預金とは?相続税がかかる判定基準・時効・解消方法を相続専門税理士が解説
6. 申告期限10か月から逆算した申込のタイミング
6-1. 通知までの約1か月と申告期限からの逆算
相続が始まってから申告までの流れを並べると、こうなります。
死亡届の提出、戸籍の収集、照会の申込、通知の受領、残高証明書の請求、財産の評価、遺産分割協議、そして相続税の申告。
このうち照会の通知待ちだけで1か月。戸籍を集めるのにも、本籍が動いていれば1か月前後かかります。残高証明書は金融機関によって2週間から1か月。順番に積み上げると、財産の全体像が見えるのは相続開始から3か月から4か月後というのが現実的な線です。
相続税の申告期限は10か月。数字だけ見ると余裕がありそうですが、10か月以内に遺産分割がまとまらないと、配偶者の税額軽減も小規模宅地等の特例も原則として使えません。いったん特例なしの税額を納めることになるので、資金繰りにも響きます。
ただ、救済の道は用意されています。申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添えて出しておけば、申告期限から3年以内に分割がまとまった時点で更正の請求ができて、そこで特例を適用できます。ただしこの見込書を出し忘れると、あとから分割しても特例は使えません。分割協議に3か月使うとすれば、財産調査に使える時間はもっと短くなります。
| 期限 | 手続き |
|---|---|
| 7日 | 死亡届の提出 |
| 3か月 | 相続放棄・限定承認の判断(民法915) |
| 4か月 | 準確定申告(所法124、125) |
| 10か月 | 相続税の申告と納税(相法27、33) |
相続税の申告期限から逆算していくと、口座照会は「思い立ったときに出す」ものではなく、戸籍の収集と並行して早めに動かすものだと分かってきます。
6-2. 相続放棄の3か月との衝突
もっと切実なのが相続放棄です。熟慮期間は3か月しかありません。財産と借金のどちらが多いか調べてから決めたいのに、照会の通知を待つだけで1か月が溶けます。
失敗事例:熟慮期間3か月に照会が間に合わなかったケース
※以下は想定ケースです。実在の事案ではありません。
- 被相続人:三宅康夫さん(仮名)
- 相続人:長男の亮太さん(20年以上、父と連絡を取っていなかった)
- 亮太さんが父の死を知ったのは、叔母からの電話。死亡から約2週間後
- 父の生活状況も財産も分からず、借金がある可能性も否定できない
亮太さんはまず相続放棄を検討しました。ただ、財産がプラスなら放棄したくない。そこで口座照会を申し込むことにします。
戸籍を出生から集めるのに1か月半かかりました。申込ができたのが、死亡から約2か月後。通知が届いたのは約3か月後です。
熟慮期間の起算日は、亮太さんが父の死を知った日です。期限は死亡から約3か月半後になりますから、通知が届いた時点で残りは2週間しかありません。
通知書には3つの金融機関の口座が並んでいました。ただし残高は書かれていません。ここから残高証明書を3行に請求して回答を待つと、どう考えても2週間では終わりません。結局、判断材料が揃わないまま期限を迎えることになりました。
どうすれば防げたか
- 照会の結果を待つあいだに、判明している範囲の金融機関へ先に残高証明書を請求しておく。並行して進めれば、通知が届いた時点で半分は片づいている
- 熟慮期間の伸長を家庭裁判所に申し立てる。ただしこの申立て自体も、相続の開始を知ったときから3か月以内に行う必要があります。通知を待ってからでは間に合いません


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1か月は、思っているより長いです。
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関連記事:相続税の申告とは?仕組み・控除・計算方法・手続きの流れを税理士がわかりやすく解説
7. 照会を申し込むべきケースの見極め方
7-1. 申し込む価値が高いケース
5,060円と1か月を投じる価値があるのは、こういう状況です。
被相続人と疎遠で、取引先の見当がまったくつかない。ネット銀行やネット証券が中心で、紙の通帳も取引報告書も出てこない。転勤や引っ越しが多く、赴任先で作った口座が残っている可能性がある。
金融取引がネットに移ったことで、残された家族が「どこと取引していたか」を知る手がかりそのものが減りました。取引報告書や利用明細は郵送されなくなりましたし、金融機関のカレンダーやタオルが家のあちこちに置かれていた時代のように部屋を見渡せば取引先の見当がつくということもなくなっています。こういう状況だと、一括で聞けることの価値が上がります。
7-2. 通帳が揃っていて急がなくていいケース
反対に、通帳とキャッシュカードがひととおり揃っていて、取引先が2行か3行に限られているなら、急いで申し込む理由は薄くなります。
- 想定ケースです。実在の事案ではありません
- 被相続人:沢井静子さん(仮名)
- 相続人:長女ひとり
- 通帳3冊、キャッシュカード4枚が自宅から発見された
| 項目 | 照会を使う | 通帳から手作業 |
|---|---|---|
| 費用 | 5,060円 | 0円 |
| 日数 | 約1か月 | 約1週間 |
| 判明数 | 5件 | 4件 |
| 拾えない | 未付番の口座 | 通帳のない口座 |
この設定だと、照会を使って追加で見つかるのは休眠口座1件。残高が数百円ということもあります。
ここで気をつけたいのは、どちらの方法にも「拾えないもの」が残るという点です。付番されていない口座は照会に出てきませんし、通帳もカードも残っていない口座は手作業では見つかりません。照会を使えば見落としがゼロになる、というものではないんですね。
金額だけ見れば誤差です。ただ、あとから口座が1件出てくると、遺産分割協議も金融機関の手続きもやり直しになります。数百円のために書類を集め直す手間を考えると、5,060円が高いのか安いのかは、ご家族の状況次第としか言えません。
相続手続きの流れ全体のどこにこの照会を置くか。不動産なら名寄帳、証券ならほふり、預貯金なら口座照会と、財産の種類ごとに調べ方が分かれています。自分のケースでどれが必要かを最初に仕分けしておくと、無駄打ちが減ります。
関連記事:相続手続きの流れ6ステップと期限一覧【相続専門税理士が解説】
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まとめ
相続時口座照会制度について、要点を3つに絞ります。
分かるのは金融機関名・支店名・預貯金の種類・口座番号・預貯金者名の5項目で、残高は含まれません。対象は生前に付番された口座だけなので、「該当なし」は口座がないことの証明にはなりません。そして申込をきっかけに口座が凍結されることがあります。
2026年10月1日には、機構が個人番号を確認できなかった場合の手数料返還ルールが新設される予定です。空振りリスクの見え方が少し変わります。同じ日にほふりの開示費用も上がるので、証券口座も調べるつもりなら申込時期は考えどころです。
照会は財産調査の入口であって、ゴールではありません。ここから残高証明書、取引明細、名義預金の検討へと進んで、ようやく申告書が書ける段階になります。入口でつまずかないための時間配分を、早めに組んでおいてください。
関連記事:相続に必要な戸籍謄本とは?取得方法・読み方を税理士が解説
よくある質問
分かりません。利用規定で残高は照会の対象外と定められています。通知されるのは金融機関名、支店名、預貯金の種類、口座番号、預貯金者名の5項目です。残高は判明した金融機関に残高証明書を請求して確認します。
1件5,060円(税込)です。現行の規定では、該当口座なしでも書類に不備があっても返金されません。2026年10月1日の改正予定版では、機構が被相続人の個人番号を確認できず依頼が合意解除された場合に限り、委託先金融機関を通じて返却されることになっています。
おおむね1か月が目安です。結果は転送不要の簡易書留で、申込時に届け出た国内の住所あてに郵送されます。
凍結される場合があります。照会によって被相続人が亡くなった事実が各金融機関に伝わるため、金融機関の判断で取引停止措置が取られることがあります。葬儀費用の支払いや公共料金の引き落としが残っている場合は、申込の順番に注意してください。
調べられません。この制度の対象は預貯金口座です。証券口座は証券保管振替機構への「登録済加入者情報の開示請求」という別の手続きになります。法定相続人が請求する場合、法定相続情報一覧図を使えば4,950円(税込)、使わなければ6,050円(税込)です。2026年10月1日以降は、それぞれ6,050円と7,700円に改定されます。
付番されていれば見つかります。付番されていなければ、口座が存在していても照会結果には現れません。生前にマイナンバーを届け出ていない古い口座は、この制度では拾えないと考えてください。
別の手続きです。「貯金等照会書(相続用)」はゆうちょ銀行の様式で、ゆうちょ銀行内に被相続人名義の貯金があるかどうかを調べる現存調査に使います。全国の金融機関を横断する相続時口座照会制度とは、対象範囲も申込先も異なります。