法定相続情報一覧図とは?取得方法・必要書類・書き方を相続専門税理士が解説
被相続人の戸籍を1枚の図にまとめ、その内容を法務局が証明する仕組み。これが法定相続情報証明制度で、交付される書類が「法定相続情報一覧図」です。戸籍の束の代わりになり、相続登記から相続税の申告まで、各窓口で使い回せます。
先に、判断の軸を一つ。この一覧図が活きるかどうかは、手続き先の数で大きく変わります。提出先が多いほど効果は大きく、とくに金融機関が複数あるご家庭で威力を発揮します。逆に提出先が1か所で終わるご家庭では、交付までの1〜2週間を待つぶん、メリットは小さくなります。
とはいえ、作るべき場面ではこれ以上ない時短ツールになります。問題は、知らずに作ると確実に作り直しになる落とし穴がいくつかあること。相続税の申告での続柄、代襲相続での書き方。このあたりを、税理士の立場で遠慮なく書きます。
この記事で分かること
- 法定相続情報一覧図と法定相続情報証明制度の関係
- 相続登記・預貯金・有価証券・相続税申告・年金の5つの使い道
- 取得に必要な書類と、自分で申請する手順
- 代襲相続・養子・数次相続があるときの書き方
- 費用・有効期限・使えないケースなどの注意点
目次
1. 法定相続情報証明制度とは?「制度」と「一覧図」の関係
まず言葉の整理を。似た名前が2つあって、ここで多くの方が混乱します。法定相続情報証明制度が仕組み、法定相続情報一覧図がその仕組みで出てくる書類。制度=枠組み、一覧図=紙。これだけ押さえれば十分です。
1-1. 一覧図は「戸籍の束を1枚にした、法務局お墨付きの書類」
一覧図の正体は、戸籍の束を1枚に圧縮した法務局のお墨付きです。亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍。これを家系図のような1枚に置き換え、登記官が戸籍と突き合わせて認証文を付ける。だから各窓口が、戸籍の束の代わりに受け取ってくれます。ただの自作メモとは、重みがまるで違います。
1-2. いつから始まった制度?
始まったのは平成29年(2017年)5月。当初の用途は相続登記が中心でした。そこから使い道が広がり、今は相続税の申告にも金融機関にも使えます。戸籍そのものの集め方は相続に必要な戸籍謄本にまとめました。

2. 法定相続情報一覧図は何に使える?5つの使い道
戸籍の束の代わりに使える主な場面は、5つ。
- 相続登記(不動産の名義変更)
- 預貯金の払戻し・名義変更(銀行)
- 有価証券(株式・投資信託)の名義変更(証券会社)
- 相続税の申告(税務署)
- 年金など、死亡に伴う手続き

交付は無料。必要な枚数だけ出してもらえます。効果が大きいのは、ここで提出先が多いとき。同じ一覧図を何枚も使い回せるからです。逆に1〜2か所で終わるなら、交付までの待ち時間ぶん、メリットは小さくなります。
比較例:手続き先が6か所あるケース
手続き先が銀行3行・証券会社1社・法務局・税務署の計6か所だったとします。戸籍の束を1セットで回すと、1か所に出して返却を待ち、また次へ、を6回。返却に毎回1〜2週間かかり、順番待ちだけで2〜3か月にふくれます。一覧図を6枚もらって同時に出せば、この行列が消える。枚数が無料だから「同時に出す」が成り立つ、という話です。逆に、出す先が1〜2か所なら、この同時提出のメリットは効きません。金融機関が複数あるときにかぎって作る、という運用をする事務所もあります。

相続専門税理士 藤本のチェックポイント
ご相談のなかで「全部の窓口で使える」と思い込んでいる方がときどきいらっしゃいます。実際は、提出先によって受け付けない・別書類を求めることもあります。使う前に、その窓口で一覧図が使えるか一本電話で確認する。これだけで二度手間がかなり減ります。
3. 相続税の申告で使うときの「続柄」の落とし穴
ここからは本業の話なので、はっきり書きます。相続税の申告書には、相続人が誰かを示す書類を付けます。平成30年4月以後、その戸籍の束に代えて一覧図の写し1枚を添付できるようになりました。写しをコピー機で複写したものでも構いません。
ところが、この続柄の書き方でつまずいて、作り直しになる方がいます。
3-1. 申告に使うなら、続柄は戸籍どおりに
申告に使う一覧図は、子の続柄を「長男」「長女」と戸籍どおりに書く。まとめて「子」と書いた一覧図は、相続税の申告では受け付けてもらえません。例外はありません。実子か養子かが判別できないからです。養子がいれば、その養子の戸籍謄本(または抄本)も一覧図とは別に添えます。
失敗例:「子」と書いて申告に使えなかったケース
お父さまが亡くなり、相続人はお母さまと子3人。申告期限まで残り2か月という時期に、長男の方がご自分で一覧図を取得しました。続柄は「子」。ところが税務署で添付書類として使えないと言われ、法務局へ作り直しの再申出。再交付に約1週間、郵送の往復も入れて10日近くを失いました。期限直前の10日は、相続の現場では致命傷になりかねません。「子はダメ」を最初に知っていれば、この10日はまるごと防げたわけです。
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関連記事:相続手続きの流れ6ステップと期限一覧【相続専門税理士が解説】
参考:相続税の申告書の添付書類の範囲が広がりました(国税庁)
4. 取得に必要な書類
必要なのは、基本この4つ。
| 区分 | 書類 | どこで取る |
|---|---|---|
| 故人 | 出生〜死亡の戸籍一式 | 本籍地の市区町村 |
| 故人 | 住民票の除票 | 最後の住所地の市区町村 |
| 相続人 | 全員の現在戸籍 | 各相続人の本籍地 |
| 申出人 | 本人確認書類 | 運転免許証・マイナンバーカード等 |

骨が折れるのは、ほぼ故人の戸籍一式です。出生までさかのぼると、結婚や転籍で本籍が何度も変わっていて、複数の役所をまたぎます。
令和6年3月からの戸籍の広域交付で、最寄りの窓口でまとめて取れるようになりました。負担は確実に減っています。ただし兄弟姉妹分は対象外、郵送や代理人では使えない、といった例外あり。取り方の詳細は別記事にまとめています。
関連記事:相続に必要な戸籍謄本とは?取得方法・読み方を税理士が解説
5. 取得の流れと、自分で申請する手順
流れは3ステップ。
- 必要書類(戸籍一式など)を集める
- 法定相続情報一覧図を自分で作成する
- 申出書を書いて、戸籍・一覧図と一緒に法務局へ提出する
提出後、登記官が中身を確認し、問題なければ認証文付きの写しを交付。出した戸籍一式も一緒に返ってきます。

5-1. どこの法務局に出す?
申し出る先は、次の4つのどれか1つを管轄する法務局。
- 故人の本籍地(亡くなった時の本籍)
- 故人の最後の住所地
- 申し出る人の住所地
- 故人名義の不動産の所在地
窓口でも郵送でも可。遠方なら郵送一択でしょう。
5-2. どれくらいで交付される?
日数は正直に書きます。法務局として「何日で出す」という公表値はありません。混み具合と管轄しだいで、1〜2週間が目安。これより早い保証はどこにもない、と思っておいたほうが安全です。急ぐなら、出す前に管轄へ電話一本入れておく。

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戸籍が1通でも抜けていると、その場で差し戻されます。とくに古い改製原戸籍は遠方の役所に眠っていることがあり、ここで足止めされる方は少なくありません。提出前に、出生まで戸籍が切れ目なくつながっているかを一度だけ指でたどってみてください。抜けが見つかるのは、たいていこの瞬間です。
6. 一覧図の書き方・記載例【代襲相続・養子・数次相続】
ここに、見落とされやすいルールが一つあります。代襲相続で先に亡くなった子の名前は、一覧図に書きません。氏名は載せず、「被代襲者(令和○年○月○日死亡)」とだけ記します。相続関係説明図や家系図とは、ここが決定的に違うところです。
一覧図そのものは、A4の白い紙。故人を中心に相続人を線でつなぎ、故人は氏名・最後の住所・本籍・生年月日・死亡年月日、相続人は氏名・生年月日・続柄を書きます。相続人の住所は任意。書いておくと、相続登記で住民票を省けることがあります。
6-1. 死亡した相続人がいるとき(代襲相続)
子の誰かが先に亡くなり、その子(故人から見た孫)がいれば、孫が代わりに相続人になる。これが代襲相続です。
記載例:代襲相続があるケース
故人は川村一夫さん。妻の節子さん、長女の佐伯美和さんは健在で、長男の健太さんは一夫さんより前に亡くなっています。健太さんには子(孫)の陽斗さん・結衣さんがいる。この場合、一覧図に並ぶのは妻・長女・孫2人。亡くなった長男・健太さんは「被代襲者(令和○年○月○日死亡)」と書き、氏名は載せません。孫の陽斗さん・結衣さんは、続柄を「(孫・代襲者)」として相続人に並べます。健太さんの名前を書いても受理されることはありますが、法務局の記載例どおりが無難です。

6-2. 養子・数次相続のとき
養子も相続人。続柄は「養子」と戸籍どおりに書く。申告で使うなら、ここも効きます。数次相続(手続き中に相続人が亡くなり、次の相続が始まること)は厄介で、一覧図は故人1人につき1枚。まとめて1枚にはできません。全体像を見せたいなら、認証のない相続関係説明図を別に添える手があります。誰が相続人になるかの基本は法定相続人に。
関連記事:法定相続人とは?範囲・順位・3つの非課税枠を相続専門税理士が解説
7. デメリット・費用・有効期限などの注意点
先に結論を。「一覧図さえあれば万能」は誤りです。できないこと・使えない場面が、はっきりあります。提出先が少ないなら、無理に作らない選択もあります。理由を順に書きます。
7-1. デメリット・使えないケース
一覧図は、戸籍どおりの相続関係を写すだけのもの。その後の事情は映りません。相続放棄をした人も載りますし(放棄の結果は反映されない)、廃除された人は載らない。遺産分割の中身も出てきません。代襲相続だと被代襲者が名前なしで読み取りにくく、戸籍の束の提出を求める金融機関もあります。さらに、故人や相続人が日本国籍を持たないなどで戸籍をそろえられない場合は、そもそも使えません。
7-2. 費用
法務局の交付手数料はゼロ。何枚もらっても無料です。お金がかかるのは戸籍のほう。全部事項証明書が1通450円、除籍・改製原戸籍が1通750円。郵送なら切手代も乗ります。作成や申出を専門家に頼めば、その報酬は別です。
7-3. 有効期限・再交付・委任
写しそのものに、法律上の有効期限はありません。ただし銀行や証券会社が独自に「発行から3か月以内」などと区切ることはある。提出先しだいです。法務局での保管は、申出日の翌年から起算して5年。その間は何度でも無料で再交付できます。ただし再交付を申し出られるのは当初の申出人だけで、ほかの相続人が受け取るには委任状が要ります。申し出自体は、親族のほか税理士や司法書士などの専門家に代理を頼めます。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 交付手数料 | 無料(何枚でも) |
| 戸籍の実費 | 1通450円〜750円 |
| 有効期限 | 制度上はなし/提出先が独自に設定する場合あり |
| 保管 | 申出日の翌年から5年・期間内は再交付無料 |
| 使えない人 | 戸籍をそろえられない場合(国籍など) |

相続専門税理士 藤本のチェックポイント
枚数は、見込みより1〜2枚多めに頼んでおくのがおすすめです。あとから足りずに再交付すると、また交付待ちの時間が発生します。手続き先の数を先に数えて、予備を上乗せしておく。地味ですが、これがいちばん時間を節約します。
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まとめ
最後に、判断の軸を。一覧図の効果は、手続き先の数で決まります。提出先が多いなら、これ以上ない時短ツール。少ないなら、交付待ちのぶんメリットは小さくなります。まずは提出先の数を数える。話はそこからです。
そして作ると決めたなら、外してはいけない点が3つ。相続税の申告で使う続柄は「子」ではなく戸籍どおりに。代襲相続は被代襲者を名前なしで。数次相続は人ごとに1枚。ここを外すと、ほぼ確実に作り直しです。相続の現場で、その時間がいちばん惜しい。
戸籍集めや一覧図の作成でつまずきそうなとき、相続税の申告とまとめて進めたいときは、相続専門の税理士に一度ぶつけてください。
関連記事:相続税の申告とは?仕組み・控除・計算方法・手続きの流れを税理士がわかりやすく解説
よくある質問
できます。窓口持参のほか、郵送での申出・受取が可能です。郵送で受け取る場合は、返信用の封筒と切手を申出時に同封します。戸籍一式も郵送で返却されます。重要書類なので、書留やレターパックが無難です。
相続関係説明図は自分で作る図で、法務局の認証はありません。遺産分割の結果なども自由に書けます。一覧図は法務局が認証した公的書類で、書ける項目が決まっており、遺産分割の中身は載りません。代襲相続では被代襲者の氏名も載らないなど、書き方のルールが厳格です。
提出先の数だけ、が基本です。交付は無料なので、手続き先が複数あるなら同時に出せるよう多めに取るのが効率的です。足りなくなっても、保管期間内(申出日の翌年から5年)なら無料で再交付できます。
増えます。子や親がいないために兄弟姉妹が相続人になる場合、故人の戸籍だけでなく、故人の両親それぞれの出生から死亡までの戸籍も必要です。集める通数が一気に増えるため、早めの着手をおすすめします。
原則として、戸籍一式がそろわないと一覧図は作れません。故人や相続人が日本国籍を持たない場合などは、制度自体を使えません。戦災・災害で戸籍が滅失している場合は、市区町村発行の告知書などで対応できることもあるため、管轄の法務局に相談してください。
不動産登記に限っては、申請書に番号を書くことで一覧図の写しの添付を省けます。ただし、使えるのは不動産登記だけ。預貯金や相続税の申告など、ほかの手続きでは番号は使えず、一覧図の写しそのものが必要です。