【2026年最新】相続税の申告とは?専門税理士が仕組み・計算・控除・申告方法まで徹底解説
「親が亡くなったら相続税を払わなきゃいけないの?」——そんな不安をお持ちの方は少なくありません。相続税の申告とは、亡くなった方から財産を引き継いだときに行う、税金の手続きのことです。
現金や不動産(土地・建物)、有価証券(株式・投資信託等)のほか、ご遺族が受け取る生命保険の金額が一定ラインを超えると、税務署への申告と納税が必要になります。
ただ、誰が・いつ・どんな財産に税金を払うのかは、ご家庭ごとの事情で大きく変わります。
この記事では、相続税の基本的なしくみから申告の流れ、控除や特例まで、初めての方にもわかるようにまとめました。「まず何を知っておけばいいの?」という方は、ぜひ最後まで目を通してみてください。
この記事で分かること
- 相続税のしくみと、税金がかかる条件
- 相続税の対象となる財産と非課税財産の違い
- 基礎控除の計算方法と、課税対象額の考え方
- 相続税 計算手順と税率の仕組み
- 配偶者控除や小規模宅地等の特例などの控除制度
- 相続税申告が必要なケースと申告手続きの流れ
- 税務調査のリスクや、調査が入りやすい事例
- 生前贈与や不動産活用などの節税対策
相続税の知識がまったくない方でも安心して読めるよう、専門的な内容もかみ砕いてお伝えしています。
読み終えるころには、相続税申告の全体像と「自分は何をすればいいのか」がクリアになっているはずです。
目次

1. 相続税とは?
ひと言でいうと、相続税は「人が亡くなったあとに残した財産を家族などが受け取ったときにかかる税金」です。
たとえば、こんな財産が対象になります。
- 現金・預金
- 不動産(土地・建物)
- 有価証券(株式・投資信託等)
- 車・貴金属など
ただし、誰にでもかかるわけではありません。財産が一定の金額以下であれば、相続税はかかりません。
この一定の金額のことを「基礎控除」といいます。
1-1. 相続税の基本的な仕組み
相続税の計算は、ざっくり次の4ステップで進みます。
- 亡くなった人の財産の全てを確認(家・土地・預金・株など)
- 借金や葬儀費用などを差し引く
- 残った金額から「基礎控除」を差し引く
- 控除後の金額が課税対象となる
相続する人がもらう財産の金額に応じて、税率が変わる「累進課税」が使われています。もらう金額が大きい人ほど税金も高くなる仕組みです。
1-2. どんなときに相続税がかかるのか
相続税がかかるのは、亡くなった人の財産の合計が、基礎控除を超えているときです。いくらから相続税がかかるのかは、相続人の人数によって変わります。
基礎控除の計算式:
3,000万円+600万円×法定相続人の数
| 相続人数 | 基礎控除額 | 計算例 |
|---|---|---|
| 1人 | 3,600万円 | 3,000万円+600万円×1 |
| 2人 | 4,200万円 | 3,000万円+600万円×2 |
| 3人 | 4,800万円 | 3,000万円+600万円×3 |
| 4人 | 5,400万円 | 3,000万円+600万円×4 |
1-3. 相続税がかかる人・かからない人
相続税がかかる人は、もらった財産の合計が基礎控除より多い場合です。
逆に言えば、相続する財産が基礎控除の範囲内におさまっていれば、税金はかからず、申告もしなくていいことになります。
日本では、相続税が実際にかかる人は全体の1割ほどとも言われています。
相続税がいくらからかかるかを把握するには、まず次の3つを整理しておくとスムーズです。
- どれくらいの財産をもらったか
- 借金があるか
- 法定相続人が何人いるか
1-4. 相続税と贈与税の違い
相続税と贈与税は、どちらも財産をもらったときにかかる税金ですが、違いは「もらうタイミング」です。
| 項目 | 相続税 | 贈与税 |
|---|---|---|
| タイミング | 死後に財産を受け取るとき | 生前に財産をもらうとき |
| 非課税枠 | 基礎控除(3,000万+600万×法定相続人) | 年間110万円まで |
| 税率 | 10〜55%(累進課税) | 10〜55%(累進) |
| 特例制度 | 配偶者控除・小規模宅地等の特例など | 相続時精算課税制度など |

相続専門税理士 藤本のチェックポイント
ご相談いただく中で、「贈与と相続、どっちがお得なの?」というご質問はとても多いです。一定の条件を満たせば「相続時精算課税制度」を使って、贈与を将来の相続とまとめて計算できます。ご家庭の状況に合わせて選ぶのがポイントですね。
📌 このセクションの要点
- 相続税は亡くなった方の財産を引き継ぐ際にかかる税金
- 基礎控除(3,000万円+600万円×相続人数)を超えた場合に課税
- 実際に相続税がかかるのは全体の約9%程度
- 現金・不動産・有価証券などが課税対象
2. 相続税の対象となる財産
相続税は、亡くなった方の財産を引き継ぐ際に課される税金ですが、すべての財産が対象になるわけではありません。
現金や不動産のように明確に課税対象となるものもあれば、生命保険の一部や墓地のように非課税とされる財産もあります。さらに、名義が本人でなくても相続税がかかるみなし相続財産と呼ばれるものもあるため、「何が対象か」を正しく把握しておくことがカギになります。

2-1. 課税対象になる財産(現金・不動産・有価証券など)
相続税の課税対象となる財産には、大きく分けて「金銭的な価値を持つもの」が含まれます。
| 種類 | 具体例 | 評価方法 |
|---|---|---|
| 預貯金 | 普通預金・定期預金 | 残高そのまま |
| 不動産 | 自宅・賃貸用物件 | 路線価×面積 or 固定資産税評価額等 |
| 有価証券 | 株式・投資信託など | 相続発生日の終値ベースなど |
| 自動車 | 自家用車 | 中古車販売価格を基に時価評価 |
| 貸付金 | 被相続人からの貸付金 | 額面どおり |
| 貴金属 | 絵画・宝石・金など | 鑑定評価額 |
2-2. 非課税財産(生命保険・墓地など)
すべての財産が課税されるわけではなく、一定の条件を満たすものは非課税になります。
主な非課税財産:
非課税となる主な財産
- 生命保険金の一部(法定相続人1人あたり500万円まで)
- 死亡退職金の一部(法定相続人1人あたり500万円まで)
- 墓地・仏壇・位牌などの祭祀財産
- 宗教用具
- 日常生活に通常必要な家具・衣類
2-3. みなし相続財産とは
みなし相続財産とは、被相続人の死亡によって取得したものの、民法上の相続財産ではないもののうち、相続税の課税対象とされるものを指します。
代表例:
- 生命保険金(契約者が被相続人の場合)
- 死亡退職金
- 遺言による贈与(遺贈)
これらは被相続人の死亡を原因として支払われるため、実質的には財産の一部とみなされ、相続税が課されます。
2-4. 財産の名義と課税対象の関係
相続税では、財産の「名義」だけでなく、「実質的な所有者」が誰であるかが重要視されます。
注意すべき名義預金の例:
- 子ども名義の預金口座だが、実際に管理していたのは被相続人
- 配偶者名義だが、資金の出所は被相続人
- 孫名義の口座に定期的に振り込んでいた預金
「名義が誰か」だけで安心せず、お金の出どころや実際の管理状況まで丁寧に確認しておきましょう。

相続専門税理士 藤本のチェックポイント
名義預金は、私の経験上、税務調査で最も指摘されやすいポイントです。「子ども名義だから大丈夫」と思っていても、通帳の管理やお金の出どころが被相続人なら、相続財産に含めて申告しなければなりません。ご不安な方は一度、口座の管理状況を整理してみてくださいね。
2-5. 相続人の範囲と割合
相続が発生した際、誰がどの程度の財産を受け取るのかは、法定相続人の範囲とその法的な割合によって決まります。
2-6. 法定相続人とは誰のことか
法定相続人とは、民法で相続の権利が認められている人のことです。
相続順位:
- 配偶者:常に相続人
- 第1順位:子(亡くなっている場合は孫)
- 第2順位:直系尊属(親・祖父母)
- 第3順位:兄弟姉妹(亡くなっている場合は甥姪)
2-7. 相続順位と相続分の基本ルール
| 組み合わせ | 配偶者 | その他 |
|---|---|---|
| 配偶者と子 | 1/2 | 子:1/2(均等分割) |
| 配偶者と親 | 2/3 | 親:1/3 |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 3/4 | 兄弟姉妹:1/4 |
| 子のみ | - | 全員で均等に分割 |
2-8. 相続人が複数いる場合の分け方
相続人が複数いる場合、基本的には法定相続分に従って遺産を分け合いますが、現実には被相続人の遺言や遺産の内容に応じて「遺産分割協議」を行うことが一般的です。なお、遺言で特定の相続人に偏った配分がされた場合、他の相続人には遺留分を請求する権利があります。
分割方法の選択肢:
- 現物分割:財産をそのまま分ける
- 換価分割:売却して現金で分ける
- 代償分割:一人が相続し、他の相続人に金銭を支払う
- 共有分割:不動産などを共有名義にする
2-9. 養子・内縁・認知された子の扱い
| 立場 | 相続権 | 注意点 |
|---|---|---|
| 養子 | あり(実子と同じ) | 普通養子は実親からも相続可 |
| 内縁 | なし | 遺言による遺贈は可能 |
| 認知子 | あり(実子と同じ) | 認知されていることが必要 |
関連記事:遺留分とは?相続でもらえる最低限の取り分を専門税理士が解説
📌 このセクションの要点
- 相続税の対象財産:現金・不動産・有価証券・車・貴金属など
- 非課税財産:墓地・仏壇・生命保険金の一部(500万円×相続人数)
- みなし相続財産も課税対象(生命保険金・死亡退職金など)
- 名義預金は実質的な所有者で判断される
3. 相続税の基礎控除と課税対象額の出し方
相続税申告が必要かどうかは、まず基礎控除という制度を理解することから始まります。
相続が発生した際、被相続人(亡くなった方)の財産のうち、一定額までは相続税がかからない仕組みになっており、それが基礎控除です。

3-1. 基礎控除の計算式(3,000万円+600万円×法定相続人)
相続税の基礎控除額は、以下の計算式で求められます。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
たとえば、被相続人に配偶者と子供2人がいる場合、法定相続人は3人となり、基礎控除額は3,000万円+600万円×3=4,800万円です。
この金額以下であれば、相続税申告は原則不要となります。
基礎控除額の例
| 相続人数 | 計算式 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1人 | 3,000万円+600万円×1 | 3,600万円 |
| 2人 | 3,000万円+600万円×2 | 4,200万円 |
| 3人 | 3,000万円+600万円×3 | 4,800万円 |
| 4人 | 3,000万円+600万円×4 | 5,400万円 |
参考:相続税の計算(国税庁)
3-2. 控除後に課税される条件とは
基礎控除額を差し引いたあとの財産が課税遺産総額です。
この金額が0円以下であれば、相続税申告は原則として不要です。
逆に、この金額が1円でもプラスであれば、相続税申告義務が発生します。
ただし、実際に税金を支払う必要があるかどうかは、各種控除や特例(配偶者控除、小規模宅地等の特例など)を適用したうえで判断されます。
見落としがちですが、次のような財産も課税対象に含まれます。
- 生命保険金の非課税枠を超える部分
- 退職金の非課税枠を超える部分
- みなし相続財産
- 名義預金

3-3. 控除の誤解と注意点
相続税の基礎控除については、”5,000万円までは非課税”といった誤解が根強くあります。
これは以前の制度の名残で、2015年(平成27年)の税制改正以降、控除額が大きく引き下げられました。
その他の注意点:
- 控除額は”一人当たり”ではなく”相続全体”に対するもの
- 都市部に不動産を所有している家庭では、基礎控除を超えるケースが増加
- 配偶者控除が適用されても、申告そのものは必要なケースがある
関連記事:相続税はいくらからかかる?基準と判断方法を専門税理士が解説
関連記事:相続税の基礎控除はいくら?計算式・早見表【令和最新版】|広島の専門税理士が解説
📌 このセクションの要点
- 基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
- 控除後の金額が1円でもプラスなら申告義務が発生
- 「5,000万円まで非課税」は旧制度の情報で誤り
- 配偶者控除を使っても申告自体は必要な場合がある
4. 相続税の計算方法
相続税は、遺産の総額や法定相続人の人数で金額が大きく変わります。「うちの場合、いくらくらいになるんだろう?」と気になる方は、ここで相続税 計算のやり方をつかんでおきましょう。

4-1. 課税遺産総額の求め方(例付き)
課税遺産総額は、相続税 計算の出発点となる金額です。
計算手順:
- 相続によって得た財産の合計額を算出
- 非課税財産(死亡保険金の非課税枠や墓地・仏具など)を差し引く
- 借金や未払医療費、葬儀費用などを控除
- 相続時精算課税制度を使った贈与があれば加算
計算例:
- 総財産:1億円
- 非課税財産:1,000万円
- 債務と葬儀費用:1,500万円
- 課税遺産総額:7,500万円
4-2. 相続税率の一覧と累進課税制度
相続税は、取得金額に応じて税率が高くなる「累進課税制度」が採用されています。
相続税 税率は10%〜55%の7段階に分かれており、課税遺産総額から各人の法定相続分をもとに個別に計算されます。
相続税率表(平成27年1月1日以後の相続)
| 取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | 0円 |
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超 | 55% | 4,000万円 |
参考:相続税の税率(国税庁)
4-3. 相続税早見表の使い方と注意点
相続税 早見表は、課税取得金額ごとの税率と控除額を一覧で確認できる便利なツールです。
使い方:
- 相続人ごとの課税取得額を算出
- 相続税 早見表の該当区分を確認
- 税率を適用して計算
例:取得額が5,000万円なら
- 税率20%、控除額は200万円
- 5,000万円×20%−200万円=800万円が相続税額
4-4. 実例:5,000万円/1億円/2億円のケース別試算
相続税は、課税遺産総額を法定相続人の人数で按分し、それぞれに税率を適用して計算します。
計算の前提条件:
- 法定相続人:配偶者と子1人(計2人)
- 基礎控除額:3,000万円+600万円×2人=4,200万円
| 遺産総額 | 課税額 | 各人取得 | 税率 | 控除額 | 税額概算 |
|---|---|---|---|---|---|
| 5,000万円 | 800万円 | 400万円 | 10% | 0円 | 約80万円 |
| 1億円 | 5,800万円 | 2,900万円 | 15% | 50万円 | 約820万円 |
| 2億円 | 1億5,800万円 | 7,900万円 | 30% | 700万円 | 約2,960万円 |
※実際は配偶者控除や特例により、税額はさらに変動します。

相続専門税理士 藤本のチェックポイント
上の試算表は法定相続分どおりに分けた場合の概算です。実際には配偶者控除を使うことで配偶者の税額がゼロになるケースがほとんどなので、「誰がいくら受け取るか」の分け方で税額がガラッと変わります。二次相続(配偶者が亡くなったときの相続)まで見すえた分割がとても大切ですよ。
📌 このセクションの要点
- 課税遺産総額=全財産−非課税財産−債務−基礎控除
- 税率は10%〜55%の7段階(累進課税)
- 遺産5,000万円(相続人2人)で約80万円、1億円で約820万円が目安
- 配偶者控除や特例で実際の税額はさらに変動する
関連記事:相続税の計算方法と早見表【2025年最新】専門税理士が図解で解説
5. 相続税の控除・特例制度
相続税には、条件次第で税負担をぐっと軽くできる「控除」や「特例制度」が用意されています。配偶者や同居の親族が相続するケースでは、自宅の土地評価が大幅に下がることも珍しくありません。
主要な控除制度の比較表
| 制度 | 控除額の目安 | 主な条件 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 配偶者控除 | 最低1.6億円まで無税 | 法定相続分または1.6億円以下 | ★★★ |
| 小規模宅地 | 土地評価額を最大80%減額 | 居住用・事業用の土地 | ★★★ |
| 未成年者 | 10万円×(18歳-年齢) | 相続人が18歳未満 | ★★ |
| 障害者 | 10万円×(85歳-年齢) | 相続人が障害者 | ★★ |
| 相次相続 | 前回納付額の一定割合 | 10年以内に2回相続 | ★★ |
| 贈与税額 | 生前贈与時の贈与税額 | 相続開始前の贈与 | ★ |
5-1. 配偶者控除の適用条件と計算例
配偶者が受け取る財産は、1億6,000万円または法定相続分のどちらか多い方まで相続税がゼロになります。これが「配偶者控除(配偶者の税額軽減)」です。
計算例:
- 遺産:1億8,000万円
- 法定相続人:配偶者と子1人
- 配偶者が1億6,000万円を相続すれば非課税
注意点:
ただし、この軽減を受けるには相続税申告書の提出が条件です。「税額ゼロだから出さなくていい」と思い込むと、あとで困ることになります。
5-2. 小規模宅地等の特例の対象と使い方
「小規模宅地等の特例」を使うと、自宅や事業用の土地の相続税評価額が最大80%まで減額されます。
適用例:
- 1億円の自宅土地 → 2,000万円の評価に
対象となる人:
- 配偶者
- 同居していた親族
- 相続後も居住や事業を継続する人
関連記事:小規模宅地等の特例とは?対象・要件・計算方法を税理士がわかりやすく解説
5-3. 未成年者控除・障害者控除とは?
未成年者控除と障害者控除は、相続人の将来の生活保障を目的とした税額控除です。
| 種類 | 対象 | 計算式 | 具体例 | 控除額 |
|---|---|---|---|---|
| 未成年者 | 18歳未満の相続人 | (18歳 − 年齢) × 10万円 | 15歳の場合 | 30万円 |
| 障害者 | 障害者(85歳未満) | (85歳 − 年齢) × 10万円 | 70歳の障害者 | 150万円 |
| 特別障害者 | 特別障害者(85歳未満) | (85歳 − 年齢) × 20万円 | 60歳の場合 | 500万円 |
5-4. その他の控除(相次相続、贈与税額控除など)
その他の主な控除制度:
- 相次相続控除:10年以内に2回以上の相続が発生した場合に適用
- 贈与税額控除:生前贈与を受けた相続人が、支払済みの贈与税を相続税から差し引ける
こうした控除で二重課税を防ぐ仕組みになっています。ただし、計算がかなり複雑で適用要件も細かいので、早めに税理士と一緒に「使えるかどうか」を確認しておくのがおすすめです。

相続専門税理士 藤本のチェックポイント
「配偶者控除で税額ゼロだから、申告は出さなくていいですよね?」——このご質問、本当に多いんです。答えは「いいえ」。配偶者控除は申告書を提出して初めて使える制度です。期限ギリギリに気づいて慌てる方も少なくないので、早めに動いていただけるとうれしいです。
📌 このセクションの要点
- 配偶者控除は1億6,000万円まで非課税(申告必須)
- 小規模宅地等の特例で自宅土地を最大80%減額できる
- 未成年者控除は18歳未満が対象(民法改正後の基準)
- 控除適用には申告が必要。税額ゼロでも提出を忘れない
6. 相続税の申告と納付の流れ
相続税は「誰が」「いつまでに」「どうやって」申告・納付するか、ルールがはっきり決まっています。
基礎控除を超えたら、10ヶ月以内に申告しなければなりません。必要書類も多く、早めの準備がカギです。

6-1. 申告が必要なケースとは
相続税申告が必要かどうかは「課税遺産総額」が「基礎控除額」を超えるかで判断します。
基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数
例)相続人2人 → 4,200万円
課税対象に含まれるもの:
- 現金・不動産・有価証券
- 名義預金
- 死亡保険金・退職金(非課税枠超の部分)
6-2. 必要書類一覧(戸籍謄本・遺産目録など)
相続税申告で提出する主な書類を挙げておきます。
- 戸籍謄本(出生〜死亡)
- 相続人の住民票・印鑑証明
- 遺産目録
- 不動産の登記簿謄本・評価証明書
- 預金残高証明書・通帳コピー
- 生命保険金支払証明書
書類の取り寄せに時間がかかるものも多いので、チェックリストを作って早めに動き出しておきましょう。
関連記事:相続に必要な戸籍謄本とは?取得方法・読み方を税理士が解説
6-3. 申告期限と納付期限の厳守ポイント
相続税申告と納付の期限は死亡日の翌日から10ヶ月以内です。
例)死亡日:2025年1月1日 → 申告・納付期限:2025年11月1日
期限を過ぎると以下のペナルティがあります:
- 加算税(10〜20%)
- 延滞税(年率2.4%前後)
6-4. 延納(分割払い)・物納の条件と手続き
相続税は原則として現金一括払いですが、手元にまとまったお金がないときは「延納」(分割払い)や「物納」(不動産などで納める)という制度が使えます。
| 項目 | 延納 | 物納 |
|---|---|---|
| 条件 | 10万円超・困難な事情あり | 延納不可・不動産等の提出可能 |
| 期間 | 最長20年(利子税あり) | 一括納付・審査あり |
| 手続き | 申告と同時に申請+担保提出 | 物件明細提出・税務署の許可必要 |
📌 このセクションの要点
- 申告・納付期限は死亡日の翌日から10ヶ月以内
- 期限超過で加算税(10〜20%)・延滞税が発生
- 戸籍謄本・遺産目録・残高証明書などが必要
- 一括納付が困難な場合は延納・物納制度がある
7. 税務調査と追徴課税のリスク
相続税申告後、税務署は内容を精査し、不備や不自然な取引が見つかると税務調査に進む可能性があります。
🔍 税務調査が入りやすい5つのケース
- 相続財産が1億円以上の高額案件
- 不動産の評価額が市場価格と大きく乖離
- 名義預金や名義株式の申告漏れが疑われる
- 生前贈与の記録が不明確
- 海外資産や暗号資産の申告が不十分
7-1. 税務調査が入りやすいケース
税務署は、以下のようなケースで調査対象を選定しています:
- 現金・預貯金が多く名義預金が複雑
- 過去に生前贈与歴があるが記録が曖昧
- 評価が不自然な不動産がある
- 遺産分割協議が成立していない
- 相続人の1人が申告していない
7-2. 調査時にチェックされるポイント
税務調査で税務署が確認する主なポイント:
| 項目 | 内容例 |
|---|---|
| 名義財産 | 子や配偶者名義の預金・保険など(名義預金) |
| 不動産 | 実勢価格との差が極端な場合 |
| 生前贈与 | 契約書がない、証拠が曖昧な贈与 |
| 使途不明 | 大きな現金引き出しの理由が不明確 |
7-3. 申告漏れによるペナルティ(加算税・延滞税)
申告漏れが発覚した場合のペナルティ:
| 税種 | 内容・割合 |
|---|---|
| 過少申告 | 原則10%(悪質なら15%) |
| 無申告 | 原則15%(重加算なら20%) |
| 延滞税 | 年率7.3%(2025年現在は約2.4%に軽減) |
7-4. 修正申告・更正の請求のタイミング
申告後に誤りに気付いた場合の対応:
修正申告
- 自主的に訂正
- 加算税が軽減される可能性あり
- 期限なし
更正の請求
- 税務署の処分に異議を申し立てる
- 申告期限から5年以内
📌 このセクションの要点
- 高額案件・名義預金・生前贈与の記録不備は調査リスクが高い
- 申告漏れは過少申告加算税10〜15%、無申告で15〜20%
- 自主的な修正申告なら加算税が軽減される可能性あり
- 更正の請求は申告期限から5年以内
8. 相続税の節税対策と生前対策
相続税は、事前の対策しだいで数百万円単位の節税対策が可能です。
中でも「生前贈与」「不動産評価の圧縮」「家族信託」「養子縁組」などは、合法的な節税対策として注目されています。
8-1. 生前贈与の活用(暦年贈与・相続時精算課税)
生前贈与は最も活用されている節税対策です。
暦年贈与
年間110万円以内の贈与は非課税
相続時精算課税制度
2,500万円まで贈与税がかからず、相続時に精算
注意点:
相続時精算課税制度は一度選ぶと暦年贈与に戻せません。それ以降のすべての贈与が課税対象になるので、選択は慎重に。
関連記事:生前贈与とは?非課税制度・注意点・手続きの流れを税理士がわかりやすく解説
8-2. 不動産活用による評価額の圧縮
相続財産に不動産が含まれる場合、評価方法によって課税額を大幅に下げることが可能です。
評価額を下げる方法:
- 賃貸中の建物や土地は「貸家建付地」として評価減
- 居住用宅地は「小規模宅地等の特例」で最大80%減額
関連記事:不動産の相続とは?評価方法・名義変更・節税対策を税理士がわかりやすく解説
8-3. 家族信託・養子縁組による節税戦略
家族信託は、認知症による財産凍結を防ぎつつ、将来の相続にも備えられる仕組みです。
養子縁組は法定相続人の数を増やすことで基礎控除額を拡大できるため、相続税の節税対策に有効です。
例)実子2人+養子1人 → 基礎控除額:3,000万+600万×3=4,800万円
8-4. 事前に専門家に相談すべきタイミング
節税対策は早ければ早いほど選択肢が広がります。
✔ 相続財産に不動産や非上場株式がある
✔ 生前贈与を検討している
✔ 家族関係が複雑(再婚・内縁・疎遠な相続人)
✔ 認知症リスクがある
✔ 資金に余裕がない
上記に該当する方は、相続税に強い税理士へ早期に相談すべきです。

相続専門税理士 藤本のチェックポイント
「まだ元気だから大丈夫」と先延ばしにする方が多いのですが、認知症になってからでは贈与も信託もできなくなってしまいます。お正月やお盆にご家族が集まるタイミングで、一度ざっくりとでも話し合っておくだけで、いざというときの安心感がまったく違いますよ。
📌 このセクションの要点
- 暦年贈与は年間110万円まで非課税。早く始めるほど効果大
- 不動産は貸家建付地・小規模宅地特例で評価額を圧縮
- 家族信託で認知症リスクに備え、養子縁組で基礎控除を拡大
- 「元気なうちに」「早めに」が節税対策の鉄則
9. まとめ
ここまで相続税申告・対策に関する基本情報を解説してきました。
相続は突然訪れ、準備不足や誤解によって、不要な納税やトラブルに発展することも少なくありません。大切なのは「今できる準備を確実に進めること」です。
9-1. 今すぐ行うべき3つの準備とは?
相続に備えて、すぐに始められる準備は以下の3つです:
9-2. 相続税対策に強い税理士を選ぶポイント
税理士選びで重要なのは「相続税申告の実績」と「説明のわかりやすさ」です。
✔ 過去の相続税申告件数が豊富か
✔ 節税対策提案や二次相続対策まで対応できるか
✔ 報酬体系が明確か(成功報酬・定額制など)
✔ 初回相談が無料かどうか
よくある質問
相続税に関する情報は複雑で、ネットや親族から聞いた情報が必ずしも正確とは限りません。ここでは、よくある疑問や誤解を整理します。
「基礎控除」を超えるかどうかがボーダーラインです。基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。たとえば相続人が2人なら、4,200万円までは相続税がかかりません。財産がこのラインを超えたら、申告・納付が必要です。
ケースバイケースなので、一概には言えません。毎年110万円以内をコツコツ贈与する「暦年贈与」は有利に働くことが多いですが、まとまった額を一度に贈与すると、相続税より高い税率がかかる場合もあります。さらに、亡くなる直前の贈与は「持ち戻し」で相続税の計算に含まれる点にも注意してください。ご家庭の財産規模や家族構成で最適解が変わるため、税理士に試算してもらうのが一番確実です。
最大のメリットは、財産評価や控除の適用を専門家の目で最適化してもらえる点です。自分では気づけなかった特例が使えたり、不動産の評価が下がったりして、報酬以上に税額が減ることも珍しくありません。税務署とのやり取りや書類集めもお任せできるので、精神的な負担がかなり軽くなります。費用の目安は、遺産5,000万円〜1億円規模で20〜50万円程度です。
遺言書それ自体に税金を安くする効果はありません。ただ、遺言書があると遺産分割がスムーズに進むため、配偶者控除や小規模宅地等の特例を期限内に確実に使いやすくなります。「申告期限までに遺産分割がまとまらなかった」というのは実はよくあるトラブルで、そうなると特例が使えず税額が跳ね上がることも。結果的に「遺言書のおかげで節税できた」というケースは少なくありません。